【釣果ログ】
サゴシ×2
今回は6名のご参加。
朝早くから意気揚々と出発です。
遠方での釣果が良いとのことでしたので、一気に小呂島を目指して走行。
順調な走行でスピードも申し分なく、もうすぐ小呂島。ということろで事件が発生。
ん?なんかスピードが一瞬落ちた気が・・・スロットルを緩めてみると
排気口から黒煙が少し出ています。
なんだろう?オーバーヒート?と思ってエンジンルームを開けてみると少し黒煙が・・・
エンジンは動いていて回転数も上がる。しかし最大パワーは出ない。
なにせ、排気のにおいがそこかしこでするのでどうもおかしい。
どう考えても、何かの故障を抱えたのは確か。
しかし、エンジンのエマージェンシー信号パネルは何一つ表示されていない・・・
エンジンではない何か?・・・
海水の取り込み口にビニールが詰まった?→それならオーバーヒートランプかエンジンtempが上がるはず。
エンジンオイル?いや、これは8月に交換してオイルプレッシャーも正常、漏れもない
そもそもエンジンは問題なく動いているのだから・・・
電話で知り合いの船にアドバイスをもらいますが、当然見えているわけでもなく、
想像でこんな症状なら・・・というご意見をいただけるだけ。
それでもありがたいのですが、不安のみ増して行きます。
しかし船長としては安全を最優先せねばならない立場ですので、
断腸の思いではありましたが緊急帰港を決定。皆様も受け入れていただき
エンジンに影響のない5ノットで港を目指し、都合4時間越えで何とか港に到着
(途中でサゴシナブラ撃ちのみ実釣)
修理に全力を尽くすことを誓い皆さんに別れを告げます。
さてここからが気の重い仕事。
まずはエンジンルームに潜ってみると

なんか銀紙みたいなものがパラパラ落ちてる・・・なんだこれは?

あ、その上部にある排気マニホールドの遮熱材かも?とおもい見ると熱でボロボロ。

ドライバーで遮熱材をあげてみると・・・あれ?パイプがない?

まさかパイプ全体が燃え落ちたかと思い、急いで遮熱材を取り除きます。

え、二つに折れてる。
穴が開いているというレベルではなく、溶接部からバキっと真っ二つ。
触ってみると、かなりボロボロ(茶色の方)で触れるだけでぽろぽろと落ちる始末。

構造物にあった品番をみて調べてみると、鉄でできた曲がりパイプのよう。
それを3つ溶接したようなパーツを排気マニホールドとして使ったのでしょう。

それをステンレスのミキシングエルボー(シルバーの部分)と溶接で接続って感じのようです。

今回のトラブルを検証結果として分かったことプラス自分の想像を書いてみると、前ボートオーナーは
エンジン(ターボ)の排気マニホールドと、冷却用の海水排出ミキシングエルボを接続する際に、
自作の鉄製パイプを加工+溶接でつないで完成。もともとそうだったのか、以前も壊れてこの形で修理
したのかは不明。
しかし、致命的な欠点として、海水が流れる環境で、ステンレスと鉄を溶接してしまったために
イオン化傾向が影響、鉄側が腐食のスピードを速めてしまい、今回のような破断につながった
のではないかと想像。
※イオン化傾向
ステンレスは鉄(Fe)を主成分として、クローム(Cr)やニッケル(Ni)の合金。
簡単に言うと鉄よりもステンレスの方が腐食しにくく、鉄とステンレスを溶接した場合、
鉄がなくなるまでステンレスにイオンを供給する電池のような存在になる。
結果、ステンレスは無傷だが鉄はボロボロとなる
理科で習った以下のごろ合わせはこのイオン化傾向を示す順番
「貸そうかな、まああてにすんな、ひどすぎる借金」(Li K Ca Na Mg Al Zn Fe Ni Sn Pb H Cu Hg Ag Pt Au)
といって、考えをめぐらせてみるとこの方法が絶対ダメってことでもない気がしてきています。
理由として
①排気マニホールドはかなりの高温になるため、できれば定期的に整備で入れ替えたいから安価な鉄で作るのはアリ
②ステンレスと溶接することで鉄側が犠牲になりステンレス側がボロボロになることを保護することができる。
③溶接さえできるならステンレスと鉄は容易に溶接可能なため修理が楽。
唯一問題なのは、そうした整備記録がないため、どういった理由でこのパーツになっているかが
想像でしかないという事。
これが引き継がれている情報なら、こちらも準備や覚悟ができるんですけどね。
中古艇の難しいところです。
私はすべて修理はログとして残していきますので、もしも次のオーナーに譲るときは
その整備データもすべてお渡しするようにします。
ボートの難しいところはそうした整備記録がほとんど残っていない事。
これがもう少し慣例化して、履歴があることが中古価格に反映されるようになれば
もっとボートを身近にできると思うんですけどね。
売る側も選ぶ側も、整備記録にはこだわりましょう。